
風水で墓を考えるということ
今回は「陰宅風水(お墓の風水)」についてお話しします。
風水と聞くと、多くの人が住宅(陽宅)を思い浮かべますが、実は風水の原点はお墓(陰宅)にあります。
一般的なご相談は圧倒的に陽宅風水が多く、「お墓を風水で建てたい」という依頼はごくわずかです。
また陰宅風水は非常に奥が深く、陽宅以上に難解であるため、実際に理解して実践できる風水師も日本では限られています。
そのため、実は「風水でお墓を建てたいと思っても、頼れる風水師が見つからず困っている」という声も少なくありません。
しかし、風水の歴史を辿ると、本来は「お墓のための理論」から始まったことがわかります。後にその一部が住宅や都市設計にも応用されていったのです。
つまり、真の風水を語る上では、「陰宅=お墓の風水」を避けて通ることはできません。
本記事では、私が実際に携わった風水墓建立の現場をご紹介します。自然の龍脈と方位の氣を融合させた、氣の宿るお墓づくりのプロセスです。
風水墓建立プロジェクトの概要と現地の氣
ある日、当社に一本のお電話をいただきました。
「風水でお墓を建てたいので、現地でコンサルティングをお願いしたい」
ご相談の内容は、まさに“風水墓を一から設計してほしい”というものでした。
現場は中部地方の山地。周囲には長良川の清流が流れ、大自然の氣に包まれた風光明媚な土地です。

長良川
施主様のご要望は、墓石の向きや氣場改良を含めた「氣を整える設計」のアドバイスと、建立の立ち会い。
私は現地に7泊8日で立ち会いながら、最初から最後まで全工程をサポートさせていただきました。
お墓の区画も非常に広く、敷地全体の氣の流れや周囲の山々との関係、さらには施主様の生年月日との吉関係など、あらゆる観点から風水評価を行う必要がありました。
現地に立ったとき、「これは氣が集まる地だ」と直感しました。
山から流れてくる龍脈と川の氣、そして澄んだ空気に包まれた空間には、確かな生命のうねりが感じられたのです。
龍脈の流れを探る
さて、お墓に龍脈がどのように流れているかを調査しなければならないのですが、昔の風水師であれば、山に入り何日も掛けて調査しなければならなかったのでしょうが、現代は科学が進歩していて、地図の技術も昔よりはるかに正確に探ることが可能になっています。
おそらく現地の山に入っての調査であれば、大きな自然を相手に調査することになるので、方位の誤差が出たりすることはあったでしょう。
今は航空写真と等高線が入った地図を照らし合わすことができ、かなり精度は高くなるので、風水業界も最新の技術を取り入れての調査となります。
墓所は長良川の東側に位置しますが、この場所には鷲ヶ岳(1671m)という山を起源として龍脈が流れてきている場所です。
長良川の源流は大日ケ岳(1709m)ですが、墓所は鷲ヶ岳の龍脈を得ています。
ここまで判明してきたので、次は主山と入首の関係が吉かどうか、入首と墓所の方位は吉かどうか、主山と墓所の方位は吉かどうかなどを見極めることが必要です。
風水羅盤で、八曜殺、八殺黄泉、穿山七十二龍、透地六十龍という龍法で吉凶を見定めるのですが、幸運にも全て吉方位となります。
ということは、墓所の位置は龍脈の力を存分に享受できる場所だと判断できます。
こうした「龍脈とお墓の関係」は、風水墓の本質に関わる非常に重要な要素です。
どのように氣の流れを見極め、吉のポイントを選定するかが、一つの判断基準になると考えています。
墓石の向きを定める|墓に眠るご先祖と施主との吉関係を導く技術
次の作業としては、お墓をどの方位に向けて施主と吉関係にしていくことを決めなければなりませんが、まずはお墓の後ろは山などに守られ、お墓の正面は視界が開けて眺望が良い方位を基本的に向けていきます。
さらに施主と吉関係になる方位に細かく決めていきます。
地盤正針百二十龍分金、天盤縫針百二十龍分金という龍法で判断し、更に風水奥義とも言える玄空大卦法で龍山向水フォーメーションにて吉関係が揃うポイントを決めて墓石を向けます。
それこそ1度未満の中で勝負を掛けて墓石業者と協働で少しずつ吉ポイントの方位に向けていくので、細心の注意と集中力が必要とされます。
「お墓の向きが気になる」
「方位はどちらがいいのか」
そんな声を耳にする機会が増えています。
ほんのわずかな方位の違いが、ご先祖の安らぎや子孫の運氣にまで影響を与えるというのが、風水の世界です。
氣場改良でイヤシロチの墓にする
おおよその区画が出来上がってきたところで、土地の氣場改良をしてイヤシロチ化を図ります。

氣場改良工事

埋炭作業
イヤシロチとは何かというと、良い磁場の土地のことを指すのですが、良い氣を生みだすと言われ、高温度で精製された炭を大量に埋めて磁場が安定して安息の地となります。
逆に悪い磁場のことをケガレチと言って、磁場が不安定でそういう場所は植物も育たない場所です。
墓区画の中心に穴を掘って埋炭していきます。
今回は施主様の強いリクエストもあってアドバイスさせてもらいました。
さらに埋炭の上にブラックシリカという北海道でしか産出できない希少な天然鉱石を埋めるのですが、ブラックシリカは「神々が宿る石」と言われ、マイナスイオンを大量に放出してくれます。

「塩で清めたブラックシリカ|イヤシロチ化の要」
近年は「土地の氣が悪い気がする」「墓地が重く感じる」といった相談も増えてきました。
氣場改良とは、そうした“目に見えない違和感”に、理論と技術で応える試みでもあります。
墓は単なる構造物ではなく、ご先祖の魂が宿る場。その氣を整えることは、子孫にとっても大切な祈りの行為だと考えています。
美しいデザインとなる黄金比と白銀比
全容が出来上がってきましたが、かなり大きな墓所であることがわかってきます。
今回のサイズの寸法にはある秘密が隠されています。
皆さん、黄金比と白銀比というサイズの法則をご存知でしょうか?
縦横の寸法を一定法則のサイズにすることで美しさを出すことができます。
黄金比とは、縦横寸法が1:1.618の関係で、パルテノン神殿やピラミッドが黄金比になっています。
一方、白銀比は1:1.414の関係で、東京スカイツリーや法隆寺が有名です。
今回の墓区画は白銀比を採用しています。

黄金比と白銀比
墓所にも“美”を宿すという考え方は、単なる装飾ではなく氣の整いにも通じます。
古代から建築や祈りの場に受け継がれてきた比率は、自然界の秩序と響き合うもの。
ご先祖の魂が眠る場所に調和をもたらすこの設計は、まさに目に見えない氣のデザインとも言えるでしょう。
最後の墓碑建立に向けて

墓碑建立作業
そして最後に墓碑建立作業に移りますが、大変重量があるために重機で持ち上げて置いていきます。
ある程度位置が決まったら、1度未満の方位に合わせるために職人さんと協働で作業を進めることになるのですが、予定している方位に向けるにはミリ単位で少しずつ方位を傾けていきます。
「たかが数ミリ」
「ほんの数度」
そう思われるかもしれませんが、風水の現場ではそれが“氣の通り道”を決定づける大きな違いになります。
この数ミリの中に、ご先祖の氣が宿る方角と、子孫を守る祈りのバランスがあるのです。
少しでも動かしすぎると、方位が合わないので何度も羅盤で確認しながらようやく決めることができました。
このときは、施主様、作業の方全員ほっとした様子で、私も含めて全員で祝うことができました。
風水師はやはり作業員の一人だなとつくづく実感する瞬間であり喜びを感じます。
私は、図面の上だけで判断する者ではなく、現場の空氣と人の想いを読み取る職人でありたいと思っています。
これからも現場職人として精進していきます。

羅盤で坐向を測る
幅と高さも吉寸法に合わせる
実は、風水では長さにも吉凶があります。
下の写真は魯班尺(ろはんしゃく)というメジャーですが、赤い文字のところは吉で、黒字は凶の寸法です。

魯班尺
階段の幅を使うときは門公尺の吉寸法に合わせ、お墓の高さを使うときは丁欄尺の吉寸法に合わせます。
今回も幅と高さを吉寸法になるように業者さんと打合せしながら作業を進めました。
寸法もまた、氣を整える重要な要素のひとつです。
一見すると単なる数字の違いに見えても、風水では「その寸法が持つ氣」によって運気を左右する力があると考えられています。
この魯班尺は、住宅でも門や玄関幅などでも使用できるので、機会があるときには是非吉寸法に合わせてみたら良いかと思います。
無事に完了
今回は7泊8日の長丁場の仕事でしたが、大変満足のいく仕事となりました。
施主様からメールで完成写真を送ってもらいました。
そのメールの文章に
「吉祥日に重要な作業もでき、全体的にもスムーズに工事を完了出来ました。」

完成した風水墓の全体写真
実は、今回の梅雨は大きな災害をもたらし、中部地方では打撃を受けた地域もあり、工事自体を行うのかどうかも危ぶまれる状況でした。
確かに雨が降る時間帯もあり、作業を進める上で困難を極めるときがあったのも事実です。
それでも、風水上重要な入口階段工事、氣場改良工事、墓碑建立は吉時間に敢行しなくてはなりません。
しかし不思議なもので、吉時間になると今まで降っていた雨がやんだり、終わった後に降り出すという奇跡のようなことも起こりました。
まさに吉祥を現わすことだったのではないかと思います。
雨に降られながらも職人さんも一生懸命に作業を進めてくれたことは感謝申し上げます。
時間が伸びたら吉日時に間に合わなかった可能性もありました。
このような有難い文章も施主様からいただきました。
「実際に風水措置をされたお墓をみていますと、生命の宿った聖地になっていると感じます。これからの人生にとって、何物にも替えがたいものを授かることができました。ありがとうございました。」
大変ありがとうございました。
施主様の繁栄と安寧をお祈りいたします。
風水というと住宅のイメージが強いかもしれませんが、実はお墓こそ、人生の最終地点であり氣の集約点とも言えます。
住宅は住み替えることができますが、お墓はそう簡単には動かせません。
だからこそ、そこに眠るご先祖と、そこを守る子孫との氣の調和を大切にしたい。
それが、私がこの仕事に心を込める理由でもあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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風水師プロフィール
風水建築士・安藤尚尭(あんどうなおたか)
住宅・店舗・墓所の氣の設計を専門に行い、全国対応で風水コンサルを提供中。
詳しくは プロフィールページはこちら
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