風水とは - 風水建築士・安藤尚尭が語る“氣”の本質と活用法

天地自然の力を借りて、環境と調和する究極の智慧

風水とは、古代中国から始まり、日本に伝わり、都市建設や陵墓、建物など、あらゆる面において重要な役割を果たす技術で、自然と人間の調和を追求することを目的としており、自然の力を活用して人間にとって幸福をもたらすことを目指しています。

風水は、「風」と「水」の言葉に由来します。これは、自然を意味する代名詞であり、人間が生きるために必要不可欠なものです。

宇宙空間に存在する地球は、自然法則に従って回転し、季節がやってきます。この自然法則で形作られた景観が私たち人間の目前に広がっています。

天・人・地──三才が一体となる「天人地一氣」の思想

宇宙空間に存在する地球は、自然法則に従って自転・公転を続け、季節を繰り返し生み出しています。こうした自然法則によって形作られた地球、そして山や川の美しい景観は、私たち人間の目の前に広がり、日々その恩恵を受けて暮らしています。

風水では、無限のエネルギーを秘めた宇宙、数十億年の時を経て宇宙から誕生した地球、そして地球から生まれた人間──これらすべては同じ根源的な氣によって成り立っていると考えます。

この宇宙・地球・人間の氣が一体であるという思想を、「天人地一氣(てんじんちいっき)」と呼びます。

この思想は、風水の根本的な哲理のひとつであり、以下の三つの氣──天の氣・地の氣・人の氣がそれぞれに存在しながら、切り離されることなく密接に影響し合っていると捉えます。

天の氣(てんのき)

天の氣とは、天体や時間に関するエネルギーを意味します。

太陽・月・星の運行、暦、季節、方位、気象などに象徴されるこのエネルギーは、私たちの運命や環境に深い影響を与えています。風水で用いられる「九星の巡り」や「年盤・月盤」なども、この天の氣の代表的な応用例といえるでしょう。

地の氣(ちのき)

地の氣とは、大地の地形や地勢、地場から発せられるエネルギーを指します。

山や川、地形、土壌、土地の歴史、地中の水脈、磁場、そして道路や建物の配置など、物理的かつ地理的な要素と深く関わっています。巒頭風水における自然地形の観察や、龍脈・龍穴の分析は、この地の氣を読み解くための典型的な手法です。

人の氣(じんのき)

人の氣とは、人間の意志・行動・感情・生活によって発生する氣のことです。

人は地球上に生を受けた瞬間、すなわち生年月日時に応じて天運(先天運・後天運)を授かります。これを風水では命運(めいうん)と呼びます。

この命運に基づいて、日々を暮らし、家族構成、住まい方、生活リズム、住人の心理状態や人間関係などを通じて空間に影響を及ぼしていきます。

風水における“相生”や“命卦”、そして“氣の通り道”を整える設計とは、まさにこの人の氣を整え、活かすための実践技術なのです。

「媒体」ではない──天地の氣を受けて生きる存在としての人

ここで大切なのは、「人は天と地の間に立つ“媒介”ではない」ということです。

人は天の氣も地の氣も直接に受けて生きる存在であり、その身体と精神を通じて天地のエネルギーに常に感応しているのです。

風水とは、人を通じて調和を図る技術ではなく、天の氣と地の氣そのものの自然法則に沿って整える技術です。

そしてその整った氣の中で人が生きることで、自然と心身が調い、調和が生まれるのです。

風水の目的と「福・禄・寿」

これら天の氣・地の氣・人の氣の三者は、本来バラバラに存在しているのではなく、

互いに影響し合いながら融合し、「天人地一氣」として統一された存在です。

自然の景観が生み出す「天地の氣」と、人が内に持つ「人の氣」は互いに呼応し合い、感応関係を形成します。風水の本質とは、この感応関係を研究し、調和を図ることにあります。

そのため、自然の力に対抗するのではなく、上手に活かして墓や住宅を築くことができれば、風水は「福・禄・寿」──すなわち幸福・富・長寿をもたらすと考えます。

風水は、自然と人間の調和を追求することを通じて、より良い生活を実現するようにと、現代の風水師たちは、この素晴らしい技術を発展させ、新しい発見をするために研究を続けています。

風水は、人々がより豊かな生活を送るための大きな可能性を秘めているのです。

風水の語源と『葬書』の引用

晋代の3~4世紀に書かれた「葬書」という文献に「風水」という言葉が出てきます。

『葬は気に乗ずるなり。経に曰く、気は風に乗じて則ち散んじ、水に界されて止む。古人これを集めて散じぜしめず、これを行かされば止あらしむ。ゆえにこれを風水という。風水の法は水を得ることを上とし、風を蔵することこれに次ぐ』

要約すると、「生気は風に乗せることが重要である。気は風に乗ってあまねく広がって、水によって止まる。古人はこの生気を集めて広がって散らばらないようにしたり、止めないで行かせたりして気を操るのである。だから風水というのである。風水の技法は水がある場所を最上とし、風を集めて蓄えることは次に重要である。」

風水の本質と評価方法

このように風水とは、「風」と「水」で、人間に必要な気の動きを操作するための地理的条件を整えるということで、環境を整えることで自然が発する生気を確保する方法論なのです。

評価方法として、

  1. 風水環境が生きている人間だけではなく、祖先に対しても好影響を与えているか
  2. 風水環境が、地形・地勢・水流・植物など自然環境と、宇宙の運行(陰陽五行・八卦・干支など)と相関性と調和が図れているか
  3. その結果、生きている人間および未来の子孫に対して福禄寿をもたらすのか

おおよそこの3点を中心に風水空間のあり方を作っていきます。

日本と世界の風水文化

さきほど述べたように、日本でも都城、天皇家陵墓など風水判断を持って実施されてきました。

中国が起源の風水ですが、東アジアを中心に風水思想は伝わり、民間レベルでも取り入れられています。

また欧米でも1800年代から学者による風水研究がなされ、多くの研究論文が発表されたことで欧米に伝えられ、今では風水建築が多く取り入れられています。

風水の種別と鑑定法

風水を大別すると『陰宅風水』と『陽宅風水』に分かれます。

『陰宅風水』とはお墓の風水であり、『陽宅風水』は都市や建物の風水です。

陰宅と陽宅を風水評価する方法として、『巒頭(らんとう)風水』と『理気風水』があります。

『巒頭(らんとう)風水』とは、土地の気の勢いや質を地形等の形成を目で見える有形のもので判断する方法で、大地における気の流れを重視して評価します。

気の流れや風や水の配置がどのような形になっているか、風水理論で言う「四神相応(青龍・白虎・朱雀・玄武)」や「龍穴砂水向」でお墓や建物がパワースポットの場所にあるかを判断するほか、自然形状や人口造形物から発する気が人に殺気を与えるのか、それとも生気を与えるのかを判断します。

『理気風水』とは、空間と時間には旺衰があるという考えで、陰陽五行・八卦・易・干支などに当てはめて、時空の旺衰を判断します。

時間の変化、方位空間の変化で吉凶を判断して、移転や工事の時期、空間の配置を決めていく方法です。吉凶判断するために、風水羅盤を使用します。

風水と言っても各流派があり、三合派、三元派の大きな流派が存在し、さらに細かく流派が分かれていますが、どの流派も必ず風水羅盤を使用して吉凶判断を行います。

私は、三合派、三元派の技法どちらも使っていますが、特に玄空飛星という技法をメインとし、さらに玄空大卦法も使って、陰宅・陽宅風水の判断をしていきます。

現代風水の課題と役割

古代から観察されてきた宇宙の運行や地球の自転・公転法則は、古代人によって発見されていました。

しかし、当時の技術では宇宙や地球の姿までは知ることはできず、その理由も分からないままでした。

その後、科学的に証明されたことで、古代の発見が正しいことが証明されましたが、まだ解明されていないことも多くあります。

また、解明できないことは迷信とされることもあります。

一方で、一部の自然法則が解明されたため、風水理論が正しいとされることもありますが、誤解があったことも判明しています。

風水理論は、基本的に自然法則を陰陽五行や八卦、干支などに当てはめて解釈していますが、現代の科学的な証明はまだ行われていません。

しかし、今後の研究で証明される可能性もあります。

現代の風水師は、誤った理論を率直に認め、正しい理論を進展させることが重要です。

また、現代の建築やデザインの進化に合わせ、高性能建物空間に適した風水を取り入れることも大切です。

風水建築士は、研究と努力を続け、クライアントの期待に応え、より多くの高性能風水空間を作り出すことで、社会に貢献していくことが役割だと思います。

この記事は、風水建築士・安藤尚尭が執筆しています。

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